普者黒・峰岩洞村

雲南省の東南部に位置する「文山壮族苗族自治州」は、昆明から335キロ、ベトナムと国境を接した地域にある。
国内でも有名な、田七人参の産地としても知られ、「普者黒」、「広南八宝」をはじめとする自然観光地に恵まれている。壮、苗、回、イ、布依族などの多民族が住み、様々な文化を、文山各地で見ることができる。
そんな文山地区に興味を持ったのは、愛用していたガイドブックに、ほんのわずかなスペースを割いて紹介されていた「峰岩洞村」がきっかけだった。
巨大な洞窟の中に村があるという、まるで「ウルルン滞在記」にあるような村だ。
私と友人は、同じく文山地区にあるという「普者黒」、「広南八宝」とともに、大した情報もない「峰岩洞村」を目指すことにした。
記載にあるのは、「広南県の東南120キロ、南屏鎮」という文字。
途中、「普者黒」で一泊し、私たちは一路、「南屏鎮」を目指す。そして長い長い道のりの末、ようやく午後三時半頃「南屏鎮」に到着した。
早速トラック運転手を見つけ、私たちは「峰岩洞村に行きたい」と告げた。すると返ってきた答えは、「もう日暮れだ。あんな物騒なところに行きたくないよ」。
詳細を知らなかった私たちは、30分以上も交渉し、「どうしても行きたい」と頼みこむ。
「日暮れ前までに戻ってこないと、とても危険なんだ」
「遠くから来たんです。どうしても行きたいんです。長居はしませんから」
最後には根負けした運転手が、一人の若い運転手を生贄に差し出してくれた。
そして私たちは、数十分後、何故ここまで運転手が嫌がったのかを知ることになる。
時間にしたら、おそらくは1時間程度のものだろうが、峰岩洞村は険しい山腹にあるため、恐ろしい山道を進まねば到達できないのだ。
ビル8階分はあるだろう断崖絶壁の狭い道を、トラックが激しく前後上下にゆれながら、低速で走る。一歩間違えれば、まっさかさまにあの世行き。私も友人も真っ青になり、何度も「お母さん、お父さん、先立つ不孝をお許しください」と謝罪した。
「な? 怖いだろ? おれはすごい怖いよ」
運転手の言葉にうなずくことも出来ない。
途中、崖崩れで遮断した道を、車体を斜めにしながら強引に進んで、ようやく目の前の山腹に洞窟らしきものが現れた。
洞窟の中にある奇村「峰岩洞村」だ。
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