麗江片区
〜宝山石頭城〜


閑話休題――

前日、ぬかるみにはまったと言ったが、帰りのぬかるみもまたとんでもないものだった。
何度もタイヤがぬかるみにはまり、車を降りては押すのを手伝ったりを、この後、町までの数時間、何度も繰り返すことになる。
タイヤにチェーンをつけるのを手伝ったり、長い距離を自力で歩いたりと大変な道のりだった。

しかもトラックには前日以上に沢山の人が乗り、普通に椅子に座る人の前に、さらに人が向かい合わせで座るという、説明不可能な状況での乗車を余儀なくされる。
足もろくに動かせないまま、町まではほぼ半日かかった。
最後の方は、「お尻が…お尻が…痛い…足が…つる…」とほとんど半泣きである。

何故、そんなに人が乗っていたかというと、途中で山羊を売りに町へゆく人たちが乗車したからである。
この山羊騒動がまたすごかった。
私たちはなぜか、山羊追いを手伝わされる羽目になったのだ。
山羊をトラックの荷台に追いこむため、野山を駆け巡って、山羊を追う。
山羊は言うことを聞かず、メェメェと大逃走。
結局、山羊がトラックに乗った時には一時間半ほどが経過していた。

その後も、発車したトラックの荷台から山羊が落下し、しかし首にかかった綱のために首吊り状態になってしまったりと、大変な騒ぎになった。
車に乗り切れなかった山羊使いは、山羊と一緒に荷台に乗り、首吊り山羊を救出したりと大忙し。

メェメェという悲しげな声を聴きながら、私たちは「すげぇ…この旅はありえねぇ…」と一生の思い出になることを早くも確信したのだった。
そして旅は続き、すでにアップしてある「シャングリラ」「徳欽」「チベット辺境」を巡ることになる。
石頭城は、人生でもっとも素晴らしい旅行と断言できる旅の、始まりの場所だった。

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