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地元の人が漕ぐ舟に乗り、洞窟に入る。 洞窟は予想をはるかに超えて広く、また深い。 時折、天井から光が差しこむ以外は、完全な暗闇だ。 ひやりと冷たい空気、洞窟内はひどく静かで、櫂が水を切る「ちゃぷ…」という音だけが響く。 洞窟の半ばほどにたどり着いたとき、舟頭が懐中電灯をつけた。 気づくと、向かう先からも小さな光が近づいてきていて、それが別の舟がともした懐中電灯であることを知る。 舟頭が、ふと歌を歌い始めた。 真っ暗な洞窟内、広い広い天井にわん…っと響く歌声は、ぞっとするほど美しい。 長く感じられた洞窟越え。 実際にはおそらく五分ほどの行程だが、それは私たちを異世界へといざなうには十分な時間だった。 |